「弥陀の本願信ずべし」
2021-03-04
今日から正像末和讃に入ります。
親鸞聖人が85歳の時に書かれた御和讃です。
何度も書き変えられていますが
草稿が85歳ということです。
今日いただいた最初の御和讃は
「釈迦如来かくれましまして」で始まりますが
その前に冠頭讃というご和讃があります。
夢告讃といいます。
夢のお告げの和讃です。
その前文に
「康元二年二月九日の夜寅の時
夢のお告げにいわれるには」とあります。
康元二年は親鸞聖人が85歳の年号です。
2月9日の午前4時に夢を見たというのです。
その夢の内容を
「弥陀の本願信ずべし 本願信ずる人はみな
摂取不捨の利益にて等正覚をばさとるなり」
(阿弥陀仏の本願を信じるがよい。
本願を信じる人はみな
摂め取って捨てないという利益により
この上ないさとりを開くことができる)
と讃嘆されるのです。
62歳頃関東から帰洛(京都に帰る)され
85歳の頃の親鸞聖人の生活は
決して豊かなものではなかったといわれます。
関東の門弟からご懇志をいただくのですが
間に合わないこともあり
日々の食事も事欠くことがあったのではないでしょうか。
奥様の恵信尼さまは実家の越後で暮らし
離ればなれの生活で
そんな折り84歳の時に息子の善鸞さまを義絶する
親子の縁を切るという悲しい出来事が起こります。
親鸞さまは当時としてはすごい長寿ですが
余生をゆっくりゆったり家族に囲まれて過ごす生活には
程遠い日暮らしの中で夢を見るのです。
阿弥陀さまのご本願を信じて生きて往けよ
ご本願を信じるものは阿弥陀さまの摂め取って捨てない
南無阿弥陀仏のおはたらきで浄土に生まれて
この上ないさとりの仏に成るというのです。
29歳の時によき師法然聖人からお聞きした
本願念仏の救いの法です。
思い通りにならない苦悩に生きる
迷いの凡夫を目当てに
阿弥陀さまの摂取不捨の光明は今ここに至り届いて
この私を包み込んでくださってあるといただきます。
そして命終えて阿弥陀さまのお浄土に生まれ
この上ないさとりの仏と成って
この世に還って来てすべての衆生を救うという
南無阿弥陀仏のおはたらきをさせていただくのです。
そこまで阿弥陀さまは私のことを思うてくださり
いつでもどこでも大きなお慈悲の光明の中に
摂め取ってくださっているのです。
人と生まれ生きることは本当に思い通りにならない
苦しみ悩みが尽きないままならない人生です。
ナモアミダブツとお念仏を申したら仏に成って
自分の思い通りになるということではありません。
この世に生きる私はどこまでも迷いの凡夫であり
この私をこそ必ず救わずにはおかないと
南無阿弥陀仏のおはたらきです。
これからしばらく正像末和讃を
お味わいさせていただきます。
ご一緒に、お念仏申しましょう。(2021.3.4)
